白い巨塔
白い巨塔 新潮文庫 山崎豊子
いわずとしれた、大学医学部の内部をえぐり出した山崎豊子の名作。
何度もドラマや映画になっている。
田宮版のドラマは、原作に非常に忠実。
よくできている。
ラストの財前と里見の病室内でのクライマックスが、非常に軽くなってしまったのは残念。
原作を超えることはできない。
唐沢版のドラマは、原作を大きく変えてドロドロ感がだいぶ減った。
ラストの見せ場も、田宮版にはるかに及ばない。
小説に戻ろう。
山崎豊子の小説はどれもそうだが、人間一人一人が非常によく描かれている。
それも、奥深いところまで。
通常の勧善懲悪の小説なら、例えば、財前は悪役として描かれ続け、里見は善人として描かれるづけるのだろうが、そんな単純な描かれ方ではない。
一人一人の生き様・考え方・善悪の部分、等が複雑に描かれている。
悪役的な財前だが、その人間性の描かれ方が巧みなので、財前の方に感情移入できる。
里見は、人間として無理をしすぎているような感じがする。
この小説は、教授選挙・医療裁判等を通して、大学医学部内の、特にドロドロの部分を書いたものである。
大学内部のこのような部分に驚くと同時に(しかもこれは昭和40年代の話で、今も変わっていないらしい)、先にも書いた人間の描き方にもとても驚いた。
医療界の内部告発的な小説は他にもあるが、今まで読んだ限りでは、その人間描写の部分で遠く及ばない。
山崎豊子の本はどれも名作であるが、これは間違いなく不朽の名作である。
白い巨塔〈第1巻〉 (新潮文庫)